日本の社会福祉協議会は、多様な事業を通じて社会福祉の増進に努めています。

社会福祉協議会が行っている活動には下記のものがあります。

さらに、アジア各国の社会福祉への支援など、国際交流にも努めています。

社会福祉協議会は全国すべての都道府県、市区町村に設置され、地域福祉の推進を図ることを目的とした社会福祉法人です。

社会福祉協議会の活動は、様々な福祉サービスの提供により、高齢者や障害者、子どもたちなど、人々の生活を支える重要な役割を果たしているといってよいでしょう。

本記事では、社会福祉協議会の定義から歴史、組織構造、主な活動、そして今後の展望まで、幅広く解説します。

社会福祉協議会の事業等の概要

社会福祉協議会は、社会福祉法に基づいて設置された社協とも呼ばれる民間の社会福祉法人です。

民間の団体ですが、行政区分ごとに組織されており、民間と公的な機関の両方のメリットを生かした事業を展開しています。

具体的な活動としては、民間福祉事業者やNPO、各種ボランティア団体などと、住民・行政機関との橋渡しがまずあげられるでしょう。

他にも、福祉施設や団体の連合会とそれぞれの事務局、福祉事業者などの利害調整、福祉専門職の職員養成なども行っています。

日本における社会福祉協議会の位置づけ

日本の福祉システムにおいて、社会福祉協議会は重要な位置を占めています。

社会福祉協議会は、公的な機関と思っている方もいますが、実際には民間と公の双方の利点を活かせる活動を行っているのです。

全国、都道府県、市区町村の各レベルで組織が構成され、身近な市町村単位では要援護者の生活相談事業も多く取り組まれています。

社会福祉協議会の特徴は、法人ならではといえる、地域の実情に応じた柔軟な対応が可能な点です。

住民の声を直接聞き、地域の福祉ニーズを把握し、最適なサービスの提供ができるのも、社協ならではでしょう。

また、行政や他の福祉団体との橋渡し役として、地域の福祉ネットワークの中心的存在となっています。

社会福祉協議会の歴史

社会福祉協議会は、戦後の日本社会の復興と福祉の充実を目指して設立されました。

時代とともに役割を変化させながら、地域福祉の要として発展してきた存在です。

現在では、少子高齢化や核家族化などの社会変化に対応し、新たな福祉ニーズに応える取り組みを積極的に進めています。

社会福祉協議会の歴史は、日本の社会福祉の発展過程や、地域福祉の重要性についての理解を深めるでしょう。

社会福祉協議会設立の背景

社会福祉協議会の歴史は、1908年までさかのぼります。

当初は「中央慈善協会」として誕生し、社会福祉制度の充実、実践の向上のための研究、低減、研修などに取り組んできました。

その後、現在の形につながる社会福祉協議会が発足した背景には、戦後の混乱期における福祉ニーズの高まりがあったといわれています。

1951年、GHQ(連合国軍総司令部)の要請や社会福祉事業法の施行もあり、中央社会福祉協議会(現在の全国社会福祉協議会)が発足しました。

中央社会福祉協議会は恩賜財団同胞援護会など、全国区の公的関与のある民間社会事業関連団体と合併・改組され発足したものです。

発足の目的は、戦災孤児や引揚者、生活困窮者などへの支援体制を整えることでした。

社会福祉協議会が発展した過程

社会福祉協議会は、設立以降、日本の社会福祉の発展とともに歩んできました。

1950年代から60年代にかけての社協は、各都道府県や市区町村レベルでの組織化がどんどん進められました。

その後1970年代には、高度経済成長に伴う社会変化に対応し、在宅福祉サービスの展開や、ボランティア活動の推進に力を入れていたのです。

1980年代以降は、少子高齢化や核家族化の進行に伴い、地域福祉の重要性が増大しました。

さらに在宅介護支援センター協議会や、全国デイサービスセンター協議会なども1990年代には発足しています。

社会福祉協議会は、地域福祉の推進役として、住民参加型の福祉活動を展開している法人です。

社会福祉協議会の三層となる組織構造

社会福祉協議会は、すべての市町村、政令指定都市の区、都道府県、全国の段階に組織されています。

組織されている社会福祉協議会は、それぞれ独立して運営されています。

そのため、トップに本社として全国社会福祉協議会があり、その下に都道府県や市町村の社会福祉協議会が支社として存在する関係ではありません。

市町村社協が都道府県社協を構成し、都道府県社協が全社協を構成する組織形態です。

社会福祉協議会の組織構造を理解することで、福祉活動がどのように展開されているかが見えてきます。

全国社会福祉協議会の構成メンバー

全国社会福祉協議会(全社協)は、日本の社会福祉協議会のナショナルセンターとしての役割を担っています。

構成メンバーには下記が含まれます。

都道府県・指定都市社協、全国民生委員児童委員連合会、全国社会福祉施設経営者協議会、全国段階の各社会福祉施設(連絡)協議会、全国団体の社会福祉従事者、専門職団体

主な機能は、福祉サービス利用者や社会福祉関係者への支援、全国の社協、民生委員・児童委員、社会福祉施設等の活動への支援・推進などです。

また、活動支援や推進を通じて社会福祉の発展を目指した活動を行っています。

都道府県社会福祉協議会と指定都市社協は67か所設置

都道府県社会福祉協議会と指定都市社協は、地域住民や幅広い福祉関係者の参加により、福祉サービスや福祉活動の充実や開発を進めています。

都道府県・指定都市社協のメンバーには下記が含まれています。

市区町村社協、民生委員・児童委員(組織)、社会福祉事業の経営法人、社会福祉施設、社会福祉団体、更生保護事業施設、更生保護事業団体、社会福祉従事者、専門職団体、社会福祉関係行政機関、当事者等の組織、ボランティア団体、保健・医療・教育・労働等関係機関・団体、その他地域福祉推進団体

時代の変化や地域の福祉に対応するための、調査・広報・人材育成・計画作りなどの取り組みにも積極的です。

市区町村社会福祉協議会は全国に1,825か所

市区町村社会福祉協議会は、住民に最も身近な社会福祉協議会です。

地域福祉を推進する中核的な団体として、地域生活の課題解決に日々取り組んでいます。

下記が市区町村社協の構成メンバーです。

・住民(地区社協、町内会・自治会等組織)

・福祉活動にかかわる住民組織(当事者組織・親の会員、ボランティア団体、NPO、老人クラブ、民生委員・自動委員)

・社会福祉事業及び関連分野の関係者(社会福祉施設・厚生保護事業施設等の社会福祉事業を経営する者、社会福祉行政機関)

・その他地域福祉推進に必要な団体(福祉・保健・医療・教育・労働等関係機関・団体・生協・農協・企業・労働組合など)

市区町村社会福祉協議会は、地域住民や民生委員・児童委員、福祉団体、行政などと密接に連携し、地域の福祉力を高める取り組みを進めています。

住民参加型の福祉活動を通じて、誰もが安心して暮らせる地域づくりを目指しています。

3つの社会福祉協議会の役割と連携

社会福祉協議会の3つの層(全国、都道府県、市区町村)は、それぞれ異なる役割を担いながら、互いに連携して活動しています。

全国社会福祉協議会は、社会福祉に関する様々な取り組み、事業を通じ日本の社会福祉の増進に努めています。

都道府県社会福祉協議会は、県域での地域福祉の充実を目指し活動しています。

市区町村社会福祉協議会は、地域の特性を踏まえた独自の事業に取り組んでいます。

この3層構造により、きめ細やかに取りこぼしなく福祉課題への対応が可能です。

それぞれが独立した組織ですから、全国社協が本社ということではなく、市町村社協が都道府県社協を、都道府県社協が全社協を構成しているというものです。

社会福祉協議会の主な活動と事業

社会福祉協議会の活動は住民の生活に密着しており、地域の福祉力を高める上で欠かせない存在となっています。

各事業の詳細を知ることで、社会福祉協議会の果たす役割の重要性がより理解できるでしょう。

中心的な活動である地域福祉の推進

社会福祉協議会の中心的な活動である地域福祉の推進は、公的な福祉サービスに加えて人々が手を携えて、地域に根差して助け合える環境を生み出すことです。

具体的な取り組みとしては、地域のセーフティネット機能の強化を目的とした補助金の創設による生活福祉資金貸付事業があげられます。

他にも地域社会安心確保ネットワーク事業や、ボランティア養成事業等もあります。

活動は、策定された地域福祉計画により促進されています。

ボランティアや市民活動の支援

社会福祉協議会は、ボランティア活動の推進拠点としての役割を担っている点も大変重要でしょう。

全国各地の社協では、ボランティア・市民活動センターを設置しており、情報提供や活動支援を行っています。

たとえば、調査研究やボランティアコーディネーターの養成研修などを通じて、ボランティアや市民活動の推進に取り組んでいます。

他にも、ボランティア活動保険の団体契約事業で、活動中の事故等にも備えているため、安心して活動できるサポート体制が整っているといえるでしょう。

福祉サービスの質向上に向けた取り組み

全国の都道府県社協では、日常生活自立支援事業として福祉サービスの利用契約手続きの援助や、日常的な金銭管理等を行っています。

また、福祉サービス利用者と事業者の間での苦情解決を支援する「運営適正化委員会事業」も実施しています。

全社協の事業への支援は、福祉サービス利用者の権利を擁護しているものです。

低所得者などが対象となった生活福祉資金貸付制度

生活福祉資金貸付制度は、社会福祉協議会が実施する重要な事業の一つです。

低所得者や高齢者、障害者世帯に対して、生活の安定と自立を目的とした資金の貸付を行っています。

主な資金種類には、総合支援資金、福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金などがあります。

例えば、総合支援資金には失業などで生活に困窮している方への生活支援費、賃貸契約を結ぶときに必要になる住宅入居費、一時生活再建費などの種類が見つかります。

福祉資金には、生業を営むために必要な経費、病気療養に必要な経費などの福祉費があります。

また、緊急時に少額の貸付を受けられる緊急小口資金も利用可能です・

教育支援資金では、低所得者世帯の子どもが高校や高専、大学などに修学するための経費、修学支度費を貸し付けています。

不動産担保型生活資金は、低所得や要保護の高齢者世帯に居住用不動産を担保として生活費を貸し付ける制度です。

社協は、生活福祉資金貸付制度の相談や手続きの窓口となっています。

民生委員・児童委員活動への協力

民生委員や児童委員の活動への支援や相談、助言などの役割も担っています。

全国には、約23万人の民生委員や児童委員がいますが、全社協は研修会の開催、広報誌の発行、新たな福祉課題への活動方策の研究などを通じ活動を支援しています。

社会福祉関係者への研修の実施

全国レベルで社会福祉研修所として「中央福祉学院」での研修を行っています。

社会福祉士、社会福祉主事、児童福祉司等の資格認定に関する研修課程、通信課程、社会福祉法人の経営管理などが主な内容です。

他にも、福祉人材確保の取り組み、社会福祉関係図書の出版、アジアの社会福祉支援、国際福祉機器展の開催なども事業として積極的に取り組んでいます。

社会福祉協議会の財源と運営

社会福祉協議会の活動を支える財源は、複数の要素から構成されています。

社会福祉協議会の財源の特徴は、事業活動の公共性や社会性が高い点がまずあげられるでしょう。

運営資金はきわめて公共性の高い資金を利用しており、また法人として民間財源も確保しています。

貴重な財源の部分を占めている会費

社会福祉協議会の貴重な財源の一つが会費です。

社協の会費は、住民から広く集められます。

会費の金額は地域によって異なりますが、数百円程度のところもあり比較的少額なことが多いため納入しやすい設定です

事業の活動に賛同する方が任意で納めるものですから、もちろん強制的に会費を納入することはありません。

控除の対象となる寄付金

社協では寄付金を個人や企業、団体からの寄付を受け付けており、地域福祉の推進に活用されます。

また同時に物品による寄付も、受け付けています。

寄付は税制優遇措置の対象となっており、個人の寄付では所得控除と税額控除から有利なほうを選べる市町村社会福祉協議会もあります。

寄付を希望する方は、お住まいの地域の寄付制度を確認しましょう。

行政からの補助金・委託金

社会福祉協議会の財源として、職員(介護保険従事者以外)の人件費は行政から補助対象となっています。

これは行政ではできない民間性を持ったサービスや、行政からの委託を受けた形によって事業を行っているためです。

補助金は税金ですが、公共性の高い事業であるため、行政からの補助で賄われているということです。

介護保険の事業収入

社会福祉協議会の財源の一つに事業収入があります。

介護保険事業や障害自立支援事業などの、事業収入がこれにあたります。

事業収入も活動での重要な財源であり、事業費や人件費等は介護保険収入で賄われています。

社会福祉協議会の課題

社会福祉協議会は、地域福祉の推進において大きな役割を果たしていますが、同時にいくつかの課題に直面しています。

社会福祉協議会が課題にどのように取り組み、克服していくかは、今後の地域福祉の発展に大きく関わってくるでしょう。

財政面の課題

民間組織で法人として活動しているといわれている社協ですが、自主財源は2%を切っているのが実状です。

少子高齢化により社会福祉協議会への加入率が低下しているため、自主財源となっている会費や寄付も横ばいや減少しています。

財政では借入金や補助金に依存している部分が多く、人件費を含めた事業の運営に困難をきたしている部分もあるといわれています。

また、介護保険事業などの競争が激しくなり、事業収入の確保も難しくなっています。

財政課題は、社会福祉協議会の事業展開や人材確保にも影響を及ぼしています。

財政基盤の強化に向けて、新たな財源の開拓や効率的な事業運営、寄付文化の醸成などの取り組みが求められています。

人材確保・育成の問題

社会福祉協議会における人材確保・育成は重要な課題となっています。

福祉分野全体で人材不足が深刻化する中、社会福祉協議会も優秀な人材の確保に苦慮しています。

コロナ禍には、多くの地区の社協は活動休止となってしまい、そのまま組織立った活動が難しい状態が続いているといえるでしょう。

特に、地域福祉のコーディネーターや専門性の高い職員の確保が難しくなっています。

また、職員の高齢化や長期勤続者の退職に伴う知識・技術の継承も課題です。

人材育成面では、地域福祉の推進役として求められる幅広い知識やスキルの習得、職員のキャリアパスの構築などが課題となっています。

問題に対応するため、社会福祉協議会では、職員研修の充実、働きやすい職場環境の整備、他機関との人材交流など、様々な取り組みを進めています。

地域ニーズの多様化への対応

社会の変化に伴い、地域の福祉ニーズは急速に多様化・複雑化しています。

加入率の低下などから、地域住民と社協の連携が進んでいないという評価があります。

社会福祉協議会の活動自体は長く、安心感が高いものですが、その分職員が旧型の業務の枠内での仕事以上は担わない部分もあるといわれているのです。

今後はさらに多様化すると考えられる、ニーズに応じた柔軟な対応が期待されるところでしょう。

社会福祉協議会の今後の展望

社会福祉協議会は、変化する社会情勢や多様化する地域ニーズに対応しながら、今後の展望を描いています。

課題を踏まえて、各人が安心して住みやすく穏やかな生活を送る環境を整えるため、積極的な取り組みを試みています。

地域共生社会の実現に向けた取り組み

社会福祉協議会は、地域共生社会の実現に向けて積極的な取り組みを進めています。

全社協の基本要項では、住民主体の理念に立ち、住民や地域の関係者と「ともに生きる豊かな地域社会づくり」を進めることを規定しています。

地域共生社会とは、年齢や障害の有無にかかわらず、誰もが住み慣れた地域で自分らしく暮らせる社会のことです。

具体的な取り組みとしては、多世代交流の場づくり、地域の居場所づくり、住民主体の助け合い活動の支援などがあげられるでしょう。

また、複合的な課題を抱える世帯への包括的な支援体制の構築にも力を入れています。

社会福祉協議会は、住民、行政、福祉事業者、NPOなど、多様な主体をつなぐプラットフォームとしての役割を大きく担っているのです。

今後は、さらに地域の福祉力を高め、互助の仕組みづくりを進めることで、誰一人取り残さない地域づくりを目指していくことが肝心でしょう。

他機関との連携強化

社会福祉協議会の今後の展望において、自治体や民間事業者との連携を強化するだけでなく、社協独自の役割を明確にしていく必要があります。

そのためには、行政、他の団体や機関と社協がどのような働きを担えるのか、相互理解が大切になってくるでしょう。

ともすれば行政だけで進める、民間団体に丸投げとなりやすい事業を、制度の充実化に応じて社協ができる役割をしっかり果たしていかなければいけません。

具体的には、行政機関、福祉事業者、医療機関、教育機関、NPO、企業などとの密な連携です。

例えば、地域包括ケアシステムの構築において、医療・介護の連携推進や、生活困窮者支援における就労支援機関との協働などが挙げられます。

今後は、さらに異分野との連携も視野に入れ、新たな発想による地域福祉の展開を目指していく必要もあるでしょう。

日本の福祉協議会のまとめ

社会福祉協議会は、日本の地域福祉を支える重要な組織として、多岐にわたる活動を展開しています。

全国、都道府県、市区町村の各レベルで連携しながら、地域の実情に応じた福祉サービスの提供や、住民主体の福祉活動の支援を行っています。

しかし、財政面の課題や人材確保の問題、多様化する地域ニーズへの対応など、様々な課題に直面しています。

今後は課題に対応しつつ、地域共生社会の実現や他機関との連携強化などを通じて、社会福祉協議会はさらに地域福祉の中核的な役割を果たしていくことが期待されています。